先物取引と現物取引の価格差を利用する


裁定取引は通常、先物取引と現物取引の価格差(サヤ)を利用する取引です。 これは、理論価格より高い方を売り、安い方を買って利益確定するものです。 個別の銘柄では、同一業種で割高な銘柄を売り建てして、割安な銘柄を買建ててサヤを取ることができます。 ここでは、会社が合併するときに理論価格の歪みを利用して儲ける方法を紹介しましょう。




たとえば、武田薬品と小林製薬が1対1の比率で合併するとの発表があったとします。 理論的には両社の株価は互いに近寄るはずですが、信用残などの需給関係の影響で、武田薬品の株価は600円、小林製薬が500円というように離れたままになることがあります。 このときには、武田薬品を売り建て、小林製薬を買建てすることで、100円の裁定利益を得ることができます。 2005年、三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスは、持ち株会社同士の合併に際して、UFJ1株に対し、三菱東京FG株を0.62株割り当てると発表しました。 三菱東京FG(99万円)を基準にすると、UFJ(56万円)の理論価格は61万3000円となり、三菱東京FGに比べてUFJの方が割安となります。



そこで三菱東京FGを売り建て、UFJを買建てる裁定取引で儲けることができたのです。 信用取引で買い建てた銘柄が値下がりすれば、評価損の額だけ委託保証金はへりますが、株価が上昇して含み益が出ても、維持率の計算に影響しないことは既に説明しました。

このようなときにはクロス取引を利用すると、売買コストの削減になります。 ただし、この取引は売り気配と買い気配の差額と税金がコストになるため、注意しなければなりません。


たとえば、取引時間中の時価は300円、板状況が買い299円、売り300円でクロス取引が成立すると、差額の1円が余分に売買手数料としてかかります。 もちろん、寄り付きで取引を行えば差額を考慮する必要はありませんが、今度は株価を特定することができません。 わずかな利益を出すために頻繁なクロス取引をすることは売買手数料の上昇に繋がるため、15%以上の含み益を確保したいときに考えましょう。 もう一つの注意点は、クロス取引をすることで建て単価が上昇(売り建てのときは下落)し、新たな下落リスクが発生することです。 益出しをして担保が増加したために、これまで以上に建玉を増やせば、それだけ追証のリスクが高まります。

したがって、資金面に余力があれば、クロス取引をせず、現引きをして担保の増強を図るべきでしょう。 インターマーケット・スプレッド・トレードは、サヤを取りに行く一種の裁定取引(アービトラージ)と言えます。

東京証券取引所と大阪証券取引所の合併により、株価の安い市場で買って、高い市場で売るというアービトラージができなくなる可能性があります。 うまく収益に結びつけるには、機敏な注文執行か自動売買システムの稼働が求められます。